コインランドリーで失踪

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文体の舵をとれ第一章

アーシュラ・K・ル=グウィン『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』を長らく積んでいたので、そろそろやらなきゃと思い進捗をブログで更新していこうと思う。

正直、一人でやるのは厳しいなーと思う。モチベーションの問題もあるが、複数人でやったほうが上達が速そう。コミュニケーションの努力を渋っているので仲間を見つけられず、せめてブログで人目に晒すか〜という魂胆である。

全10章なので一日一つずつ終わらせたら10日で終わるが、そのとおりに行くかはわかりません。時間を置いて何度かやったほうが良いんだろうなという予感がある。

第一章は、「自分の文のひびき」と題されている。

窓の外の景色や机の散らかり具合を見たり、昨日の出来事や誰かが言った変なことを思い出したりした上で、そこからうきうきした文をひとつふたつみっつあたり作ってみるのだ。そうすればだんだんと気分が乗ってくるはずだ。

勇気づけられる文章が載っていたので引用した。第一章の課題は二つあって、確かにそれをやっているうちに筆が乗ってきたような気もする。続きを考えなくていい文章は好き勝手書けて楽しいなあ

はよ本題に入れ。はい。

 

練習問題 問1
一段落~一ページで、声に出して読むための語りの文を書いてみよう。
その際、オノマトペ、頭韻、繰り返し表現、リズムの効果、造語や自作の名称、方言など、ひびきとして効果があるものは何でも好きに使っていい——ただし脚韻や韻律は使用不可。

 

とりあえずで書いてみたのが下記。

 

 夜のとばりがさっさと降りてしまってからが本番でさ、長い階段を登って境内へ入るとすぐ右手、面を被った男がいてね、そいつがペンキ缶に腰掛けてひょうひょう手招きするのよ。子どもらはみなそこへ寄ってって、おはじきやらBB弾やら消しゴムやら、とにかく自分が宝物だと思うものをめいめいに出していく。それがそろったところで男が顔の前に手をやってね、すっと空気が冷える。提灯のあかりが子どもらの顔を順ぐり照らして、それを男がじっと観察してな、そうして頃合いがきたらペンキ缶の裏から発泡スチロールの箱を取り出すんだ。なかから何が出てくると思う? ひよこさ。色とりどりの。カラーひよこって一時期流行ったろ? あれが細々と生き残っていて、いまはこうやってこっそり。子どもらだって馬鹿じゃないから大人に告げ口なんかしない、口の堅いやつだけがそれに参加できるんでね。赤に緑にピンクに水色、紫やメタリックなんて変わり種もいるな。蛍光色のぽんぽんがころころそのへんを歩き回ってピーピーピヨピヨ大騒ぎよ。わきまえてんだな。ここが自分の晴れ舞台だってちゃあんとわかってるんだ。舞台袖にいるときにゃしんと寝静まってんのに、子どもらの前に立った途端、分別をもって騒ぎ出す、ありゃもう自分の美しさを完全に悟ってるんだな。……そんなかに「スパンコール」って特別めだつひよこがいてな、どういう原理だかしらねぇが動くたびにちらちら光るのよ。体の色じたいは風のような銀色でね、子どもらの注目の的で、みんなそのひよこに賭けたがる。あるとき一人の子どもがそのスパンコールの秘密を調べようとしてな、夕闇にまぎれてこっそり男の持ち物を探ったらしい。結局なにも見つけられんまま、男に見つかってそれっきりって話だが。とにかく、その綿毛たちの秘密を探ることは禁忌でね、それをやると末代まで出入り禁止になるって噂だ。

 

ちょっと硬いから方言を入れて書き直してみたのが下記。方言ってずるい。

 

 夜のとばりがさっと降りてからが本番やって、長い階段てんてんのぼってから境内に入るとすぐ右手、面を被った男がおるんよ。そいつがペンキ缶に腰掛けてからひょうひょうち手招きしとうと。子どもらはみんなそこへ寄ってくばってん、おはじきやらBB弾やら消しゴムやら、とにかく自分が宝物ち思うもんをめいめいに出してくと。それがそろったとこで男が顔の前に手をやってからね、一瞬すっと空気が冷える感じがする。提灯のあかりが子どもらの顔を順ぐり照らしてってから、それを男がじーっと観察してな、そんで頃合いがきたなち思たら、ペンキ缶の裏に隠しとった発泡スチロールの箱を取り出すんよ。なかから何が出てくるち思う? ひよこよ。色とりどりの。カラーひよこっち一時期流行ったやろ? あれが細々と生き残っとって、いまはこうやってこっそりやっとるっちゃね。子どもらだって馬鹿やないけん大人に告げ口なんかせん、口の堅いやつだけがそれに参加できるっち触れ込みやけん。赤に緑にピンクに水色、紫やメタリックなんちゅう変わり種もおる。蛍光色のぽんぽんがころころっちそのへんを歩き回ってから、ピーピーピヨピヨ大騒ぎよ。わきまえとるんよね。ここが自分の晴れ舞台やっち、ちゃあんとわかっとるんよ。舞台袖におるときはしんと寝静まっちょるんに、子どもらの前に立った途端、分別をもっていきなり騒ぎ出すんやけん、ありゃもう自分の美しさを完全に悟っとらなできんことやろ。……そんなかに「スパンコール」っち特別めだつひよこがおって、どういう原理やかしらんけど動くたびにちらっちら光っとるんよ。体の色じたいは風みたいな銀色やって、もう子どもらの注目の的やけん、みーんなそのひよこに賭けたがると。あるとき一人の子どもがそのスパンコールの秘密を調べようちして、夕闇にまぎれてこっそり男の持ち物を探ったっち聞く。結局なんも見つけられんまま、男に見つかってそれっきりっちゅう話やけど。とにかく、その綿毛たちの秘密を探ることは禁忌やけん、それやると末代まで出入り禁止になるっちゅう噂よ。

 

この課題、方言禁止にしたほうが良くない? そんなことないか。未だに方言で完結した小説を書いたことはないけど、いつか書いてみたいかもしれない。
また、今度は造語や具体名を入れたもので取り組んでみたいと思った。

 

 

練習問題 問2
一段落くらいで、動きのある出来事をひとつ、もしくは強烈な感情(喜び・恐れ・悲しみなど)を抱いている人物をひとり描写してみよう。文章のリズムや流れで、自分が書いているもののリアリティを演出して体現させてみること。

 

これが難しかった。強烈な感情が自分の中にない可能性がある。「こんなんでいいのか?」と不安が残る。とりあえず二つ書いてみたが、こういうことではないのかもしれない。わからない。

 

 見渡すと、一斉に目玉が飛び込んできた。ダメよ。ここで怖じ気づいてはダメ。しらふになっちゃダメだ。制服の右ポケットに入れてあった台本を出す。その間にも生徒たちの視線は麻里を貫き続けている。ライトが眩しい。暑い。制服の裏側がじんわりと汗ばんで、台本を開く手もおぼつかなくなる。しっかりして! 麻里は折りたたんであった紙を勢いよく開いた。
 ビリッ!
 一瞬何が起こったかわからない。漏れ聞こえる失笑で気がついた。徹夜で書き上げた台本が真っ二つに裂けている。ここで麻里の頭は真っ白になった。こめかみを汗が伝って、その感触が心のざらざらした部分を撫で回していく。目の前にマイクがある。ダメ! 叫びだしたくなるのをこらえる。台本の一文字目が霞む。頭がくらくらして目玉たちが宙を舞った。自分を中心としてぽっかりと開かれた大穴に飲み込まれていくみたいだ。

 

改行したので三段落になっちゃってるしな〜。動きのある出来事と言って大丈夫なのか。もしくは、これを強烈な感情の描写と言えるだろうか。よくわかんね〜。

 

目が文字を追いかけ、右手が勝手に動く。「ああ、友よ。ここが別れの道だ。」「ああ 友よ ここが」左手は決してさぼっているわけではない。右手がさらさらと動くので、紙が引っ張られないよう少しずつ角度を変えながら、右手の動きを繊細に追いかけ紙を押さえている。貧乏揺すりが酷くなってきた。視界が気にならない程度にぐらぐらと揺れている。そのとき、両脚の振動で左手が不随意に紙をずらした。あ。全体止まれ。「別れ」の「れ」の字がぴんと斜めにでっぱっている。見栄えが悪い。

 

もう一個書いた。どういう状況なのか謎。何してるんだ。動きを書けって別に一つ一つの動作をつぶさに書けということではないだろうと思いつつとりあえずキリの良さそうなところまで書いた。強烈な感情、というのがどういうものか分からなくて、どちらも「動きのある出来事」を主眼に置いて書いてしまった。感情苦手なんかもしれん。

 

第一章所感:
・実例一が好きだった。
・感情難しい。向き合うときがきた可能性がある。あるいは向き合わないときっぱり決めてしまうか。